お風呂場で、今日の私だけが少しほどけた夜

22時37分、帰ってきてからずっと見ないふりをしていた洗濯物の山を横目に、私はやっとお風呂場のドアを開けました。
脱衣所の電気って、どうしてあんなに現実を照らすんでしょうね。鏡に映った自分の顔を見て、「あ、今日もちゃんと疲れてるわ」と、誰にも頼まれていない実況を心の中で入れてしまいました。
スマホには未読のLINE、シンクには朝のマグカップ、ベッドの上には畳む気配だけ出して放置されたカーディガン。
もう笑うしかない、というより、笑う元気も節約したい夜。
そんな日に、ボディシャンプーの香りが少しだけ違うだけで、お風呂場の空気がふっと変わることがあります。
ポーラの【パンセ ド ブーケ】は、花束みたいな香りをイメージしたボディシャンプーで、ルージュはローズ系の甘くみずみずしい雰囲気、ブランはナルシスを基調にした清潔感のあるフローラル系の香りだそうです。
名前からして、ちょっとおしゃれすぎて、私の生活感だらけの浴室に置いていいのか一瞬迷いました。いや、詰め替え途中のシャンプーの横に置かれる運命なのに、急にフランス映画みたいな顔しないでほしい。
疲れている日の私は、香りにだけ少し甘えたい
お風呂って、本当は一日のリセット時間のはずなのに、実際は「早く洗って、早く出て、早く髪乾かして、早く寝たい」の連続だったりします。
ボディシャンプーを手に取る瞬間ですら、頭の中では明日の服、冷蔵庫の中身、返信していないメッセージ、週末の予定、婚活アプリの微妙な会話まで、なぜか全部並んでくるんですよね。
「今日はもう誰とも話したくないな」
「でも、返信しないと感じ悪いかな」
「いや、そもそも私、誰に気を遣ってるんだろ」
浴室でひとり会議。議題、多すぎ。
しかも結論は毎回だいたい出ない。
パンセ ド ブーケのルージュは、ローズを基調にしたスイートフローラルの香りで、華やぎや明るさを感じたい時におすすめされている香り。ブランは、清廉な花々とグリーンが重なるパウダリーフローラルで、落ち着きやニュートラルな気分を味わいたい時に合うそうです。
こういう説明を読むと、昔の私は「へぇ、女子力高い人のやつね」と、ちょっと斜めに見ていた気がします。
でも30歳になって一人暮らしをしていると、華やかさって誰かに見せるためだけじゃないんだな、と時々思うんです。
誰も来ない部屋で、誰にも見られないパジャマを着て、冷凍ごはんをチンして、メイクを落とした顔でアイスを食べる夜。
そこに少しだけ良い香りがあると、「私、まだ雑に扱いきってはいないかも」と思える瞬間がある。
いや、もちろんそのあと普通にスマホ見ながら寝落ちするんですけど。
そこは全然、優雅じゃない。
むしろ現実の圧が強い。
“ちゃんとしてる私”の裏側にある、誰にも見せない浴室
外では、わりとちゃんとしている人に見られがちです。
仕事では笑顔で接客するし、友人と会う時はそれなりに服も選ぶし、婚活で初めて会う人の前では「生活、整ってます」みたいな顔をします。
でも家に帰った瞬間、バッグは床、靴下は謎の場所、髪はひとつ結びという名の敗北宣言。
あの切り替わり、誰かに見られたら軽く事件です。
お風呂場も、ドラマみたいな綺麗な場所ではなくて、シャンプーのボトルの底に少し水垢がついていたり、カミソリを買い替えようと思ってから数日経っていたり、排水口の掃除を「明日の私」に投げ続けていたりします。
明日の私、いつもごめん。そろそろ労基に駆け込まれても文句言えない。
そんな浴室に、花の香りのボディシャンプーを置く。
それだけで急に暮らしが整うわけではないけれど、ボトルを手にした時の気分だけは、少し変わる気がします。
ポーラのパンセ ド ブーケは、精油を基調に、トップからミドル、ラストへ流れる香りを調香師とともにブレンドしているそうで、「みずみずしい生花のブーケを閉じ込めたような香り」と紹介されています。
その言葉を見た時、少しだけ笑ってしまいました。
生花のブーケ。
私の今日の現実は、コンビニの袋と、湿ったタオルと、食べ終わったヨーグルトのカップなのに。
でも、その差がいいのかもしれないです。
生活が整ってから香りを楽しむんじゃなくて、生活が散らかっている日のほうが、香りに救われることもある。
いい香りを選ぶ日は、誰かに褒められたい日とは限らない
婚活をしていると、つい「誰かにどう見られるか」で自分を整えようとしてしまう日があります。
髪を巻くのも、ワンピースを選ぶのも、リップを塗るのも、本当は自分のためと言いながら、どこかで相手の反応を待っている自分がいる。
それが悪いわけではないけれど、帰り道の電車で急に疲れる時があります。
「今日の私は、ちゃんと感じよくできていたかな」
「変なこと言ってなかったかな」
「また会いたいって思われたかな」
もう、面接か。
恋愛のはずなのに、いつの間にか採点される側の気分になっている。
そんな夜にお風呂でいい香りがすると、少しだけ視点が戻ってくるんです。
誰かに好かれるためじゃなくて、今日の私が今日の私を雑に終わらせないための香り、みたいな。
ルージュの華やかな感じを選びたい日もあれば、ブランの落ち着いた感じに寄りかかりたい日もある。
明るくなりたい日と、静かに戻りたい日は違うし、どちらも同じ私の中にある。
「あー、今日の私、ブランかも」
なんて言いながらボトルを選ぶ夜があってもいい。
言っている相手は浴室の壁ですけど。
ポーラと聞くと、少し背筋が伸びるブランドのイメージがあります。
でもパンセ ド ブーケは、500mLで税込1,980円、詰め替え用もあるので、毎日の中に置きやすい距離感なのが少しうれしいところです。
高級すぎて緊張するものより、手に取るたびに「ちょっとだけ気分いい」が続くもののほうが、私の暮らしには合う日もあります。
もちろん、ボディシャンプーひとつで人生が劇的に変わるわけじゃない。
明日の朝もたぶん眠いし、洗濯物はそこにあるし、婚活アプリの返信に悩む夜もまた来る。
でも、お風呂場の湯気の中で、ふわっと花の香りが立ち上がった時、私はほんの少しだけ、自分に戻る感じがしました。
それは美容というより、今日を雑に閉じないための小さな合図に近いのかもしれません。
香りって、誰にも見えないのに、どうしてこんなに気分を連れていくんでしょうね。
明日の私が選ぶのは、華やかなルージュなのか、静かなブランなのか、まだ決めなくてもいい気がしています。





