暑い日にひとりで温泉へ行きたくなる理由|エアコン疲れの休日に見つけた小さな逃避先

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夏の温泉でリフレッシュ
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夏の温泉におすすめ!暑い日こそ楽しめる

夏の温泉でリフレッシュ

午後3時を過ぎたころだった。

駅前のアスファルトがじんわり白く光っていて、信号待ちをしているだけで首の後ろに汗が伝う。

ハンディファンを持っている人も多いし、日傘もすっかり夏の風景になったけれど、それでも暑いものは暑い。

コンビニで買った冷たい麦茶を飲みながら歩いていた私は、ふと駅に貼られていた温泉地のポスターを見た。

青い空。

緑の山。

そして露天風呂。

その瞬間、思わず心の中でつぶやいた。

「いや、この暑さで温泉?」

自分で思ったのに、なぜか少し気になった。

温泉といえば冬。

寒い日に肩まで浸かって「ああ〜」と言うもの。

少なくとも私はそう思っていた。

だけど最近、SNSを見ていると夏に温泉へ行く人が意外と多い。

正直なところ、以前の私は理解できなかった。

汗をかいているのに、さらに温泉で汗をかくなんて修行みたいじゃないか、と。

でも去年の夏。

ちょっとだけその考えが変わった。

きっかけは完全に偶然だった。

友達との予定が急になくなった土曜日。

朝から特にやることもなくて、洗濯をして、掃除機をかけて、冷蔵庫の残り物で適当に昼ごはんを作って。

午後になると部屋の空気が重たくなってきて。

エアコンはついているのに、なんだか気分までぬるくなっていく感じがした。

そんな時ってないですか。

体は休んでいるのに、疲れが抜けていない感じ。

何もしていないのに元気でもない感じ。

私はあの日、なぜか急に車を走らせた。

行き先は近くの日帰り温泉。

理由は特になかった。

本当にただ、家にいるのが少し飽きたから。

到着した時もまだ半信半疑だった。

駐車場に降りた瞬間から暑い。

建物まで歩くだけで汗が出る。

「やっぱり失敗したかも」

そう思いながら受付を済ませた。

ところが不思議なもので。

脱衣所に入った頃には少しだけ気持ちが変わっていた。

冷房の効いた空気。

静かな館内。

誰かの話し声。

木の匂い。

なんだろう。

旅行でもないし特別なイベントでもないのに、日常から少し離れた感じがした。

湯船に入ると当然暑い。

当たり前だけど暑い。

肩まで浸かった瞬間、「暑っ」と声が出そうになった。

でも数分すると不思議と慣れてくる。

窓の外では蝉が鳴いていて。

露天風呂の縁に腕を置きながら空を見上げる。

真っ青な空。

白い雲。

風が少しだけ頬を通る。

その時だった。

なんだかずっと体の奥にたまっていたものがゆっくり溶けていくような気がした。

疲れというほど大きなものじゃない。

ストレスというほど深刻でもない。

でも確実に積み重なっていた何か。

返信していないLINE。

気になっている仕事。

婚活アプリで返事が来なくなった人。

体重計に乗るたびに見て見ぬふりをしている数字。

そういう小さいものたち。

大人になると、意外とこういうものが積もる。

学生の頃みたいに泣くほど落ち込むことは減ったけれど、その代わりに曖昧な疲れが残るようになった気がする。

しかも厄介なのは、自分でも気付いていないこと。

元気だと思っている。

普通だと思っている。

だけど温泉に入ると、「あれ、思ったより疲れていたかも」と気付く。

私はこれを勝手に「遅れて届く疲労」と呼んでいる。

名前は今つけた。

たぶん正式名称じゃない。

でも本当にそんな感じなのだ。

そして露天風呂から出たあと。

ここが夏の温泉の好きなところかもしれない。

休憩スペースで飲む冷たい牛乳。

冷えた炭酸水。

扇風機の風。

畳の上。

少し火照った体。

あれが気持ちいい。

冬の温泉とはまったく違う。

冬は温まるために入る。

夏は余計なものを流すために入る。

そんな感覚に近い。

もちろん汗はかく。

髪も少し乱れる。

メイクなんて完全に崩れる。

だけど不思議とそれが気にならない。

誰に会うわけでもないし。

映える写真を撮る必要もないし。

そのままの自分でいる時間。

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最近はそれが案外少ない。

気付けばSNS用の顔。

仕事用の顔。

婚活用の顔。

友達用の顔。

いろんな顔を使い分けている。

全部自分なのに、全部少しずつ違う。

だから温泉にいる時間だけは、どの顔でもなくなる。

髪をまとめて。

すっぴんで。

だらっとして。

休憩所の漫画を読んで。

気付いたらうたた寝して。

起きたら首が痛くなっていて。

「あーやっちゃった」

なんて思う。

少し恥ずかしい。

でもその恥ずかしささえ平和だ。

そういえば以前、婚活で知り合った男性に「休日は何をしていますか?」と聞かれて困ったことがある。

映画です、と言えばおしゃれ。

カフェ巡りです、と言えばかわいい。

ヨガです、と言えば意識高そう。

だけど本音は温泉で寝ている。

休憩所で漫画を読んでいる。

たぶん言わなかった。

いや、言えなかった。

なぜだろう。

大人になるほど、だらけている自分を隠したくなる。

でも本当は、そういう時間がないと息切れしてしまう。

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夏の温泉って少しだけ似ている。

派手じゃない。

SNS映えもしない。

だけど帰る頃には何かが軽くなっている。

説明できない程度に。

帰り道。

窓を開けると夕方の風が入ってくる。

昼間ほど暑くない。

オレンジ色になり始めた空。

コンビニでアイスを買おうか悩む。

結局買ってしまう。

温泉で汗を流した意味があるのかないのか分からない。

そういうところも含めて私らしい。

家に着く頃には空が少し暗くなっている。

お風呂に入ったのに、またシャワーを浴びたくなったりする。

それも夏。

効率だけ考えたら無駄かもしれない。

でも人って効率だけで生きているわけじゃない。

最近そんなことを思う。

暑い日は冷たいものばかり欲しくなる。

涼しい場所ばかり探してしまう。

それなのに、なぜか温泉が気持ちいい日もある。

人の体も心も案外単純じゃない。

だから面白いのかもしれない。

もし今、なんとなく疲れている人がいたら。

理由は分からないけれど気分が重たい人がいたら。

夏の温泉という選択肢もあるのかもしれない。

いや、本当におすすめしたいというより。

私はそこで少しだけ呼吸がしやすくなった気がした。

それだけなのだけれど。

今年の夏はどこの温泉へ行こう。

そんなことを考えながら天気予報を見ていたら、来週もまた35度予報だった。

暑いのは苦手なのに。

なぜか少しだけ楽しみな自分もいる。

あの日の露天風呂の空を、まだ覚えているからかもしれない。

たぶん。

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