夜中の「返品する」ボタンが押せない私たちへ

六月の夜です。
窓を少しだけ開けると、湿った風が部屋に入ってきます。
梅雨入りしたばかりの空気は少し重たくて、洗濯物も乾かないし、前髪も決まらないし、なんとなく気持ちまで曇りがちになります。
そんな夜。
私はスマホを見ながら、ある画面の前で固まっていました。
「返品申請はこちら」
たったそれだけのボタンです。
サイズが合わなかったワンピース。
思っていた色と違ったバッグ。
口コミに期待しすぎた美容アイテム。
返品しても何も悪くない。
ルールにも違反していない。
なのに、なぜか押せない。
今日はそんな話をしたいと思います。
誰にも見せていない思考の話です。
純度100%国内産NMNにキレイ成分14種配合!業界初・女性専用NMN!買った瞬間がピークだったことを認めたくない
最近の買い物は不思議です。
昔みたいにお店へ行かなくても、寝る前にスマホを開けば何でも買えます。
仕事帰りの電車。
お風呂上がりのベッド。
眠れない深夜一時。
気づけば「購入完了」の文字が出ています。
そして数日後。
段ボールが届きます。
開封する瞬間は宝箱を開けるみたいです。
でも。
あれ?
なんか違う。
思っていたほど感動しない。
似合わない。
可愛くない。
テンションが上がらない。
そんな瞬間があります。
本当は返品すればいいだけです。
だけど私はいつも思います。
「せっかく届けてくれたのに」
「返品するの申し訳ないな」
「まあ使えば慣れるかもしれないし」
そして結局、クローゼットの奥へ。
使わないまま眠る服が増えていきます。
不思議ですよね。
お金を払ったのは自分なのに。
なぜか相手に気を遣ってしまう。
でも本当は違うのです。
私たちが返品できない理由は、商品への罪悪感ではありません。
自分の判断ミスを認めたくないだけなのです。
【パナソニック公式】オーブンレンジBistroと厳選食材の定期購入サービス30代になると失敗を認めるのが少し怖くなる
20代の頃はもっと気楽でした。
失敗しても笑えました。
変な服を買ってもネタになりました。
でも30代になると少し変わります。
お金の重みを知ります。
働く大変さも知ります。
だからこそ失敗したくなくなります。
私は美容業界で働いていた頃、新商品の説明を何度もしてきました。
お客様は期待を込めて購入します。
だから効果を感じなかった時ほど言い出しづらいのです。
実はそれと同じことが、自分自身にも起きています。
「これを買えば変われるかも」
「この服なら素敵な私になれるかも」
「この美容液なら自信が持てるかも」
商品そのものではなく、未来の自分に期待して買っているのです。
だから返品するという行為は、
「商品が違った」
ではなく
「思い描いていた未来は来なかった」
を認める作業になります。
それが地味に苦しい。
誰にも見えないのに苦しい。
夜中のスマホ画面の前で、一人だけ傷つくのです。
人気急上昇!「ダブルまくら」が購入できるのは公式サイトだけ本当に手放したかったのは商品ではなかった
先日、白いブラウスを返品しました。
金額は五千円くらい。
特別高いわけではありません。
でも三日間悩みました。
返品するか。
しないか。
何度も試着しました。
鏡の前に立ちました。
そして気づいたのです。
私はブラウスを返品したかったわけじゃありませんでした。
「もっと素敵になれるはずだった自分」
を手放せなかったのです。
そのブラウスを着れば何かが変わると思っていました。
婚活がうまくいくかもしれない。
褒められるかもしれない。
自信が持てるかもしれない。
でも現実は変わりませんでした。
だから返品できなかった。
期待していた未来まで返却する気がしていたからです。
でも思いました。
違う。
未来は返品されない。
ブラウスがなくなっても未来は残る。
私は私のままだし、また別の選択もできる。
そう思えた瞬間、驚くほどあっさり返品ボタンを押せました。
通信無制限なのに工事不要! スマホのパケット量が使い放題で工事が不要!【SoftbankAir】私たちが本当に取り戻したいもの
ここで話は少し意外な方向へ進みます。
返品できない話を書いてきました。
でも本当に取り戻したいものは、お金でも服でもありません。
時間です。
私たちは毎日たくさんの選択をしています。
朝何を着るか。
誰に返信するか。
何を食べるか。
何を買うか。
そして失敗した選択をずっと抱え続けています。
着ない服。
使わないコスメ。
読まない本。
終わった恋。
返ってこないLINE。
全部です。
でも人生って、意外と返品できるものが多いのかもしれません。
服だけじゃありません。
思い込みも返品できる。
執着も返品できる。
「こうしなきゃいけない」も返品できる。
そして私は最近気づきました。
30代になって必要なのは、新しい何かを足すことじゃない。
いらなくなったものを静かに返却する勇気なのだと。
だからもし今夜。
あなたのクローゼットに一度も着ていない服があるなら。
使わないコスメがあるなら。
忘れられない誰かがいるなら。
無理に持ち続けなくていいと思います。
人生は意外と長いです。
そして明日はちゃんと来ます。
返品した先に残るものは空っぽではありません。
本当に必要なものが入る余白です。
六月の湿った夜。
私はそう思いながら、返品完了のメールを閉じました。
そして少しだけ軽くなった心で、冷たい麦茶を飲みました。
あの日返品したのはブラウスではありませんでした。
「失敗したくない私」だったのです。





