その甘え、やさしさのつもりだったのに|返事を待つ夜に気づいた恋の距離感

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あなたの甘え方は大丈夫?——駅のホームで、わたしは小さく失敗した

駅のホーム

昨日の夜、山手線のホームに立っていました。冷えた空気がコートの袖口からすっと入り込んで、指先だけが先に冬に追いつく感じ。発車メロディが鳴るたび、心臓が一拍だけ急いでしまう。
スマホの画面には、彼とのトーク。既読がついてから、もう少し経っている。たぶん仕事中。たぶん電車の中。たぶん、返信する余裕がない。——「たぶん」を重ねるほど、わたしの中の不安は、根拠のないまま大きくなる。

そのとき、わたしは送ってしまった。
「ねえ、今日ちょっとだけ声聞きたい」
かわいく言ったつもりだった。語尾も丸くしたし、絵文字も一個だけ添えた。重くならないように。重くならないように。……その“重くならないように”が、もう重いのかもしれないのに。

返事は、すぐには来なかった。
ホームの風に吹かれながら、わたしの頭の中だけが勝手に早足で、「うざかったかな」「また面倒な女になったかな」って、誰にも見せない顔で、ひとり反省会を始める。


“甘えられる人が好き”って、女友だちはよく言う。わたしも、そう思う。肩の力を抜ける相手って、たしかにいい。
でも同時に、男性には「嬉しい甘え」と「うざったい甘え」があるらしい、という話も聞く。甘えるって、万能のスパイスじゃない。分量を間違えると、料理そのものが台無しになるみたいに。

返信が来たのは、電車を降りて少ししてからだった。
「ごめん、今バタバタ。夜ならいけるよ」
短い。優しい。でも、短い。


その“短さ”に、わたしは勝手に意味を足してしまう。「今バタバタ」は本当なのに、「今日はもう面倒」って言われた気がしてしまう。
わたしは、甘えたかっただけなのに。どうしてこんなに、みじめになるんだろう。

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「かわいい甘え」と「うざい甘え」って、結局なにが違うの?

女性

“嬉しい甘え”と“うざったい甘え”の違いは、言い方とか声のトーンとか、そういうテクニックだけじゃないらしい。恋愛コラムでは、「かわいい甘え方」と「うざい甘え方」を分けるポイントとして、相手の状況への配慮や、要求の強さ、束縛っぽさが出ていないかが語られていることが多い。たとえば「会いたい」が“願望”として差し出されるのか、“会うべきでしょ”という圧として相手に乗るのかで、受け取られ方が変わる、みたいな話。

読んでいると、耳が痛い。
わたしの「声聞きたい」は、どっちだったんだろう。
お願いのつもりで投げたのに、相手にとっては“今すぐ応えなきゃいけない宿題”に見えたのかもしれない。
「できるなら」「無理なら大丈夫」という逃げ道を用意しないまま、わたしの寂しさを彼の予定に置いてしまったのかもしれない。

しかも、甘えって不思議で、こちらが“かわいく甘えよう”と意識するほど、裏側に別の欲がくっつく。
「本当に無理ならいいよ」と言いながら、どこかで「でも無理って言わないでほしい」と思ってる。
「忙しいなら仕方ない」と言いながら、「忙しいって言葉で片づけないでほしい」と思ってる。
その二枚舌みたいな気持ちが、自分でも嫌になる。

心理学の世界では、日本語の「甘え(amae)」が“情緒的な依存”として語られることがあって、素直な甘えと、屈折した甘え(わがまま・要求がましい形)を分けて考える議論もあるらしい。
この“屈折”って言葉が、胸に刺さる。
屈折って、つまり、まっすぐ言えないってことだ。
「寂しい」「不安」と言えばいいのに、言えないから、試す。遠回しに。相手の反応で安心したくて。

わたしがたぶんやってしまうのは、こっちだ。
甘えるふりをして、安心を取り立てる。
頼るふりをして、愛情の証明を要求する。
そりゃ、うざいよね。わかる。わかるのに、やめられない。

中盤に入るほど、思い出すのは、昔の自分の癖だ。
彼の返信が遅いと、「何してるの?」と聞いてしまう。


本当は「遅いと不安になる」って言えばいいのに、聞き方が監視になる。
“好きだから”という言い訳で、自分の不安の処理を相手に丸投げする。
そして、返ってきた返事の温度が思ったより低いと、また落ち込む。
このループ、ぜんぶ自分で作ってるのに。

でも同時に、甘えたい気持ちを「悪」と決めつけるのも、違う気がする。
だって、甘えたいって、たぶん“信じたい”と同じ方向を向いてる。
「あなたの前では、強がらなくていい?」っていう、ほんの小さな許可証がほしいだけ。
頼るって、相手を信頼しているというサインでもある、とも言われる。
——だからこそ、バランスが難しい。
信頼は、鎖にもなる。

わたしが最近気づいたのは、甘えって「量」より「形」なんじゃないか、ということ。
同じ“頼む”でも、
・「やって」なのか
・「できたら助かる」なのか
・「一緒にやりたい」なのか
形が違うと、相手の心の負担が違う。

さらに、甘えがうざくなるときって、たぶん“相手の自由時間”を削るときだ。
今夜の電話。今すぐの返信。今週末の予定。


わたしの寂しさが、相手の生活の上に落ちて、影を作る。
その影が長くなるほど、相手は逃げたくなる。
これ、恋愛だけじゃなくて、友だちでも家族でも同じだと思う。

わたしがほんの少し楽になったのは、「甘え=正解を当てるゲーム」じゃない、と知ったときだった。
男性が嬉しい甘え、女性が求める甘え、世間が言う“かわいい甘え”。


そのどれかに合わせようとすると、結局、相手が誰でも同じ行動を取る“型”になってしまう。
でも、本当は相手のタイプも、その日の疲れ具合も、関係の深さも、全部違う。
「うざい」と感じる境界線も、人によってずれる。

その日の昼休み、会社近くの小さなカフェで、同僚が恋の愚痴をこぼしていました。
「私さ、甘えられないんだよね。頼るの、負けたみたいで」
わかる。わたしも、強がりが癖になっている。だから反動で、夜になると急に甘えが爆発する。昼は自立、夜は依存。どっちも極端。

記事や体験談を眺めていると、“上手な甘え”って、だいたい3点セットで語られていたりする。①お願いを具体的にする(曖昧に試さない)②相手の都合を残す(今じゃなくてもいい)③受け取ったら必ず感謝する(当たり前にしない)。
これって、恋愛テクというより、たぶん礼儀に近い。


「やってくれて当然」じゃなくて、「やってくれたら嬉しい」。
その差が、相手の心を軽くする。
そして不思議だけど、相手の心が軽いときのほうが、こちらも甘えやすい。

だけど、礼儀だけで甘えを包むと、今度は“きちんとしすぎた甘え”になる。
「迷惑なら全然いいから!」って何度も言って、相手に“気を遣わせる仕事”を増やす。
わたしはこれも、よくやる。


断られないための保険。嫌われないための予防線。
それって結局、相手のためじゃなくて、自分のためなんだよね。

じゃあ、どうしたらいいんだろう。
答えは、まだ出ない。出したくもない。
ただ最近、わたしは“甘える前に、ひと呼吸”を挟むようになった。


今のこれは、お願い? それとも確認?
寂しさの共有? それとも不安の押しつけ?
その問いを自分に投げるだけで、言葉の角が少し取れる気がする。

たとえば、昨日のわたしなら、こう書けたかもしれない。
「今日、ちょっと寂しい日だった。もし余裕あったら、夜少しだけ話せる?」
ここには、相手の選択肢がある。


そして、わたしの感情も、ちゃんと表に出ている。
“かわいく”はないかもしれないけど、たぶん、屈折は少ない。

それでも、怖い。
弱さをまっすぐ見せるのは、かわいく甘えるよりずっと怖い。
だって、拒否されたら、言い訳ができないから。


「冗談だよ」「ただの甘えだよ」って引き返せないから。
だから、わたしはつい、遠回しな甘えを選んでしまう。

(それでも、甘えたい夜にだけ残る問い)

夜、キッチンの電気だけつけて、マグカップのお湯を飲む。部屋の中が静かすぎて、冷蔵庫の音がやけに生活っぽい。
彼からの「夜ならいけるよ」を読み返して、わたしは少しだけ自分を許す。
短い返信でも、切り捨てられたわけじゃない。


たぶん、ほんとうにバタバタだった。
たぶん、わたしは“たぶん”の扱いが下手なだけ。

甘えって、相手に寄りかかることじゃなくて、相手に自分の重さを正直に伝えることなのかもしれない。
そして、その重さを“持ってほしい”と願うのか、“ただ知っていてほしい”と願うのかで、関係の呼吸が変わる気がする。

わたしは、甘えられる人が好きだ。
でもたぶん、それは「何でも受け止めてくれる人」じゃなくて、「受け止められない日があることも含めて、ちゃんと話せる人」なんだと思う。
甘えが“うざい”に変わる瞬間って、相手を一方的に役割に閉じ込めたとき——恋人、慰め役、返信係、安心供給機——なのかもしれない。

じゃあ、わたしは彼を、どんな役割に閉じ込めてしまっているんだろう。
そして、彼はわたしを、どんな役割で見ているんだろう。
甘えるって、実は「相手を信じる」より先に、「相手を自由にしておく」ことが必要なのかもしれない。

……明日のわたしは、また同じ失敗をするかもしれない。
でも、失敗した瞬間に「うざい女だ」と切り捨てずに、「今ちょっと不安だったね」とだけ言ってあげたい。
その上で、もう一回だけ、言葉を選び直したい。

甘えたい夜は、なくならない。
その夜に、わたしは何を差し出して、何を取り立てているんだろう。

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