怒られないことが最優先になった日常で感じる小さな安心と正体不明の寂しさ

当ページのリンクには広告が含まれています。
食パンを食べる女性
  • URLをコピーしました!
目次

今日も誰にも怒られず生存成功

女性

朝の光がカーテンの隙間から細く差し込んでいて、部屋の空気がまだ夜の名残を持ったまま静かに止まっている時間に目が覚めたとき、最初に思ったのは「今日も始まってしまった」という、希望でも絶望でもない、ただの事実みたいな感想だった。

天気は悪くないのに、体の奥のほうはやや重たくて、ベッドの中で数秒だけ「このまま消えたら楽だな」と考える。

その思考は深刻なものじゃなくて、歯磨きみたいに習慣化した小さな逃避で、誰にも言うほどのことでもないから、私はそのままスマホのアラームを止めて、床に足を下ろした。

今日の目標は特別な成功じゃなくて、「誰にも怒られないで一日を終えること」。それだけで十分難易度が高いと知っている年齢になった。

小さな出来事は、だいたいいつも予告なしに来る

昼休み、会社の共有キッチンでマグカップを洗っていたとき、後ろで誰かが「あ」と小さく声を上げた。

振り返ると、同僚の子がコーヒーを床にこぼしていて、白いタイルの上に広がる茶色がやけに目立っていた。彼女は慌ててペーパーを取りに行こうとして、私と目が合って、気まずそうに笑った。

その一瞬、私は反射的に「大丈夫ですよ」と言って、近くにあった布巾で一緒に拭き始めた。

本当にどうでもいい出来事だったと思う。誰も怒ってないし、怒る理由もないし、五分後には誰も覚えていない種類の事故。

それなのに、拭きながら私の頭の中では、別の声が勝手に動いていた。「もし私がこぼしてたら、あの人はどう思ったかな」「仕事できないって思われたら嫌だな」「こういう小さいところで評価って減点される気がする」。

誰もそんな採点していないはずなのに、私はずっと、見えない採点表を自分で持ち歩いている。

わかる…たぶん誰も気にしてないのに、自分だけが永遠に気にしてる瞬間ってある。

誰にも言わない本音は、だいたいしょうもない

キッチンを出てデスクに戻る途中で、急に恥ずかしくなった。別に失敗したわけでもないのに、心の中で勝手に減点される未来を想像して、勝手に防御して、勝手に疲れている自分が滑稽だったからだ。

もっと堂々としていればいいのに、私はいつも、怒られないことを最優先に生きている気がする。

それは子どもの頃からの癖で、「褒められる」より「怒られない」を選び続けてきた結果、平均点の人生が出来上がった感じがする。

目立たない代わりに、大きく転ばない。でも、その安全運転がたまに息苦しい。誰にも言わないけど、本当はちょっとだけ無茶もしてみたいし、失敗して笑われる側にもなってみたい。

ただ、いざその場になると、体が自動的にブレーキを踏む。

今日も結局、無難に過ごしてしまった、という安堵と退屈が同時に来る。この感情は説明しにくい。生き延びた安心と、何も起こらなかった物足りなさが同居している。

誰にも怒られずに済んだ日は、たしかに成功なんだけど、どこかで「これでいいのか」とも思っている。

生存成功の日の、ささやかな違和感

女性

帰り道、駅のホームで電車を待ちながら、自分の一日をざっと振り返った。大きなミスはしていないし、誰かを傷つけてもいないし、怒鳴られてもいない。

それだけで合格点をあげたくなるくらい、最近の私は基準が低い。昔はもっと、「成長したか」「前進したか」を気にしていたのに、今は「無事だったか」が最重要項目になっている。

それが悪いとは思わない。ただ、少しだけ違和感がある。生き延びることが目標になると、世界は急に狭くなる。挑戦しない理由がいくらでも見つかるし、失敗しないことが正義になる。

今日の私は、誰にも怒られなかった代わりに、誰にも強く印象も残さなかったかもしれない。それを寂しいと感じる自分がいることに、駅の冷たい空気の中で気づいた。

でも同時に、怒られずに一日を終えた自分を、ちゃんと認めてやりたい気持ちもある。仕事して、電車に乗って、会話して、社会の中で静かに機能して帰ってきた。

それって、思っているより難しい。ニュースにはならないけど、個人単位で見れば立派なサバイバルだ。

部屋に戻ってコートを脱いだ瞬間、ほっとして笑ってしまった。「今日も生き延びたな」と、声には出さないけど、心の中で小さくガッツポーズをする。

ヒーローみたいな勝利じゃなくて、コンビニでレシートを落とさなかったくらいの地味な達成。でも、その積み重ねでしか私はできていない。

明日も同じように、誰にも怒られないことを目標にするのか、それとも少しだけ減点を恐れない日を作るのか、まだ決めていない。

ただ、こうやって毎日を「生存成功」と呼びながら続けていくのも、案外悪くないのかもしれないと思う夜がある。

あなたは今日、自分に何点をつけましたか。それは本当に、誰かの基準じゃなくて、自分の採点でしたか。

食パンを食べる女性

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次